「…っひゃ、や、だ」

身体がゾクゾクして、変な声が出てしまった。

会議室のブライドは閉まっているので、外からも廊下からも見えない。

右手の自由もなく壁際に抑え込まれた私は、ブラウスのボタンを二段目まで外されて、左胸の少し上に唇を押し当てられた。

「…んっ、やだ、離し、て…」

抵抗しようとするのだが、壁際に抑え込まれていて上手く逃げられない。

唇が離れた時、左胸の少し上にキスマークが出来ていた。

「…お仕置き。お前、人の事をからかい過ぎ。弄んでるつもり?それとも本当に欲求不満で、こーゆー事したくて誘ってるの?」

「ち、違う…そんな、つ、も」

『そんなつもりじゃない』───そう言いかけた時にされたキスはとても荒々しいものだった。

「…ずっと手に入れたくて、今が一番仕事が楽しいって知ってたから邪魔しないように我慢してたのに…どこの誰かも知らない男にとられて…。

気がおかしくなりそうなんだよっ!

お前なんて、このアザを見られて彼氏に嫌われたらいいんだ」

日下部さんは再び、唇を左鎖骨の下辺りにあてて、キスマークを残す。

何箇所かキスマークを残し、「ごめん…」と呟いて会議室を去った。

私は今起きた出来事が理解出来ないままに、力が抜けた様に会議室の床に座り込んだ。

日下部さんに酷い事をされたのに、嫌ではなかった事に驚愕した。

嫌ではなかったから、本気で抵抗しなかったのかもしれない。

目からは涙が一粒、また一粒と流れては床に落ちた。

この涙はきっと悲しいからでも、嫌だったからでもなく、ただ単に"自己嫌悪"そのものに対してだった───・・・・・・