会社の外に出ると帰宅途中のサラリーマンやOLが行き交っている。

オフィス街を通り抜けると飲食店が広がり、通りかかったラーメン店から良い匂いがした。

「日下部さん、ラーメン食べましょ!今日は私が奢りますっ」

「…二日酔いのクセに」

「何か言いました?」

「いや、別に…」

日下部さんが返事をしたのかしないのか分からないが、お腹が空いていた私は勝手にラーメン店に入る。

ラーメンを待つ間に、日下部さんは注文したビールを飲みながら、

「…そう言えば、お前は昨日、男と出かけたんだった。そして、二日酔いで仕事サボって昼寝して同僚にも迷惑をかけて…

上司が俺だったから良かったものの、他の人だったら大問題だからな」

と今更の説教じみた事を言う。

「さっきはもう気にするなって言ったのに、今更説教ですか!?」

「二日酔い良くなったからって、ラーメンに餃子を頼む気が知れない!少しは反省しろよっ」

「反省してますぅっ」

先程のエレベーターの中での激甘な日下部さんはどこに消えたのか、今はガミガミ煩い仕事中の日下部さんに戻った。

私にはコッチの方が気楽で居られるから、しょうに合っている。

「…エレベーターの中での事、セクハラ行為をバラしますよ」

「勝手にどうぞ。五年間も一緒に居たのに噂も立たないし、お前がいくら騒いだ所で誰も相手にしないでしょ?」

冗談で言ったのに相手の方が更に上手で、私は言い負かされた。

この後、香坂君の事を追求される訳ではなく、ラーメンを食べたら駅で別れた。

電車に乗り、スマホを手に取るとトークアプリに綾美からの多数の連絡があった。

着信もあった。

仕事中はサイレントにしていて、今日はずっとスマホを確認してなかったから気付かなかった。

今日の電話は長くなりそうな予感・・・。

あっ、香坂君からもメッセージ来てた・・・!!

綾美と香坂君に返信しながらも、エレベーターの中での出来事を思い出していた。

日下部さん、自宅に着いたかな?

複雑な思いを抱えながら、家路に向かう。

翌日、エレベーターの点検が入り、押しボタンや電源の主回路の接触不良だったのでは?との見解だったみたいだが、詳しい原因は分からなかったらしい───・・・・・・