「私、有澄と一緒に居たいから、料理ももっと頑張るね。有澄の仕事が忙しくなっても、きちんとサポート出来るように努力する。良家のお嬢様じゃないから花野井家に相応しくないかもしれないけど…有澄が後ろ指さされない様に精一杯出来る限りはするから…」

言葉の続きは"お嫁さんにして下さい"だけれど、言わずに止めた。

「万が一、経営難とかになっても補償は出来ないし、ライフスタイルも変わってしまうと思うけど。それでも…ゆかりが大好きなデザインの仕事は死守したいと思う」

「うん、有澄が一緒に居てくれたら、それでいいよ」

近い将来、有澄をサポートする為にデザインの仕事も出来なくなるかもしれない。

結婚して赤ちゃんが産まれたら、自宅で出来るデザインの仕事をしてるかもしれない。

未来はまだまだ先が見えず、行き先の不透明度は高い。

今は成り行きに任せて進むしかないの。

「おい、お前ら、よくもまぁ恥ずかしげもなく手を繋げるよな!」

「うわぁーっ、日下部さん!?」
「な、何で後ろに居るの!?」

「ほら、染野さんから秋葉にお土産だって。今日使わなかったステーキ肉と魚だって。保冷剤入ってるけど、蒸し暑いからさっさと帰れ!」

大きめの保冷バックにはチャック付きの袋に入っている小分けにされたステーキ肉と白身魚。

随分沢山入っていたので、来週の休みにでも、綾美達を呼んで家飲みでもしようかと言う話になった・・・と言うか、日下部さんは嫌がっていたが有澄が勝手に決めた。

日下部さんも特に話はせずに出てきてしまった様で、駅までは何となく気まづい3人で歩く事になった。

しばらく歩く内に会社経営の話になり、私はただ聞いているだけで話に全くついていけない。

「秋葉、遅すぎ!」
「ゆかり、ごめんね、先に行っちゃって…」

「いじけてるのか、お前…」
「こっちおいで!」

話に夢中になり、先に歩いていた二人が遅れていた私に気付く。

私は二人の間に割り込み、「仲良くなったね」と言って二人の腕に腕を絡めると「バーカッ」と両方から言われた。

お互いに謙遜している部分もあるけれど、結局は仲良くなってる。

大人だから合わせているのか、義理の兄弟だからか、よく分からないけれど、平穏ならばそれで良し。