糖度高めな秘密の密会はいかが?

「奥様、郁弥様がいらっしゃしゃいましたよ」

染野さんがニコニコしながら連れて来たのは、間違えなくあの人、日下部さんだった。

話の流れが私と有澄の出会いの話題になりそうだったので、日下部さんが救世主に見えた。

「ご無沙汰しております。遅くなりまして、申し訳ありません…」

「堅苦しい挨拶は抜きにして座って!」

お母様に言われるがまま、日下部さんはポーカーフェイスを崩さぬ様に挨拶を済ませると私の隣端に座る。

何か言いたそうに私をギロりと睨み付ける。

怖い、怖い!

日下部さんが席に座るとシン・・・と静まり返る。

「揃ったところで、お料理をいただきましょ。染野さん、私と主人には冷酒をいただけるかしら?」

「かしこまりました」

お祖母様の合図で乾杯をし、しばしの歓談の一時。

私は有澄と一緒にワインをいただいたのだが、フルーティで口当たりが良く、飲み過ぎてしまいそう。

染野さんの料理もとても美味しい。

フレンチのシェフだったのに、創作料理の日本食ではなく、料亭の懐石料理の様だ。

「郁弥が企画している新事業はどうかね?順調かね?」

「えぇ、まぁ。後は優秀な人材が入れば…ってとこでしょうか?」

「自分で見つけるのが大変なら、ウチの人材から引っ張りなさい。誰かしら居るだろう」

「はい、ありがとうございます…」

お爺様が日下部さんに話かけると、淡々と返答していた。

「今日、郁弥を呼んだのはね、大事な話があるのよ!会長も来た事だし、ちょうど良かったわね。ゆかりちゃんも近々、有澄のお嫁さんになるんだから、聞いてね」