有澄が日下部さんと兄弟として仲良く接してくれたら、私も嬉しいもん。

"お前"じゃなくて名前を呼ぶって事は、一歩前進したに違いない。

「お腹空いたから、ご飯食べに行こっ。日下部さんの奢りで!そもそも、日下部さんが忘年会で有澄の事バラしたからでしょ!お詫びして下さい!」

「それは悪かったと思ってるけど、誰がいつ一緒に行くって言ったんだよ?」

「俺、焼肉食べたい…」
「焼肉、焼肉!」

逃げようとする日下部さんを捕まえて、私達は『連れてって』オーラを醸し出す。

根負けした日下部さんのオッケーが出たところで相良さんも合流し、社外に出ようとした時に多岐川さんの後ろ姿が見えた。

「多岐川さんっ!」
「何ですか?私、会社辞めますからそれでいーでしょ?」
「…そうじゃなくて、日下部さんが焼肉行こうって言ってるから、行こう!」
「行きません、行く訳ないでしょっ!」

私はこの子に会社を辞めて欲しい訳でもないし、陥れたい訳でもない。

ただ、和解はしたいと思うのは勝手かな?

私が多岐川さんの隣で話しかけていると、どこからともなく夜警さんの姿が・・・。

「申し訳ありませんでした。私は多岐川さんの事が好きで何でもしてあげたかったけれど、やり方を間違えてしまいました。皆様を傷つけてしまった事、深くお詫び致します。私も本日の職務が終わり次第、仕事を辞める事で責任をとりたいと思います。ほら、七海ちゃんも謝って…!」

夜警さんは多岐川さんの頭を触り、無理やり深く頭を下げさせた。

多岐川さんの涙がポロポロと床に落ちて、小さな声で「ごめんなさいっ、私、…秋葉さんが羨ましくて嫌がらせして…ごめんなさいっ、」と繰り返し謝る。

「もう怒ってないよ、顔上げて。私達は誰にも言わないし、多岐川さんと夜警さんの立場が悪くなる様にはしないよ。謝ってくれたから、もういいの。っね?日下部さん、副社長?」

二人に訪ねると日下部さんは「早くしろ、行くぞ」と行って歩き出し、有澄は「ゆかりが許すなら俺も許すよ。早くおいで、日下部さんが逃げるっ」と言い追いかける。