更に15分後、

"副社長を上手く騙して社長に取り入って貰おうとする女は辞めさせろ"

というメールが届く。

顔色は真っ青になり、仕事どころではない。

こんなメールをされても事実無根なんだから、堂々としていれば良い。

でも、ダメージは大きくて心は悲鳴をあげ始めている。

「秋葉さん、気にしなくていいよ。秋葉さんがそんな人じゃないって皆分かってるから」
「協力して犯人捕まえよう!」

皆が声をかけてくれるけれど、震えが止まらない。

怖い。

怪文書よりもメールは履歴も残るし、不特定多数に送る事も出来る。

有澄にも日下部さんにも多大な迷惑と心労をかけているのは、確かだ。

どうしよう・・・、どうしよう。

顔の見えない相手に対して、何にも太刀打ち出来ない。

連鎖が大きくなる前に何とかしなくちゃいけないのに・・・何にも浮かばない。

「秋葉、早退するか?内容は事実と異なるが、ほとぼりが冷めるまで自宅待機。仕事は自宅でして良し!データ持ち出し可とする。責任は俺が取るから!」

日下部さんのデスクから声が聞こえたと思ったら、早退届けの用紙を手に持ち、チラつかせている。

心配そうに私を見て、上司印のところに印鑑を押してくれたので後は記入するのみ。

早退すれば逃げる事になり、何の解決策にもならない。

しかし、どうして良いかも分からないので従うまま、早退届けに記入しようとした時、誰かが企画開発部に入って来た。

「お疲れ様です」

皆が驚きを隠せず、ざわめき始めたのは副社長である有澄が入って来たからだった。

「秋葉さん、借りますね」

「え…!?ちょっと!?」

真っ先に私の元に向かい、ヒョイっと軽々しく私を持ち上げて企画開発部を立ち去る。