「…香坂君って年上の扱い上手いよね。そんな事をそんな可愛く言われたらね、その気にしちゃうんだからねっ」

「ゆかりちゃんこそ、人の気も知らないで良く言うよ。本当だったら帰さないって言いたいけど、ゆかりちゃんは明日仕事だからね…我慢する」

酔いに任せて、お互いに心の中をさらけ出している様な気がした。

香坂君が家まで送ってくれると言ったので、遠慮なく甘えたりして。

ほろ酔い気分のまま電車に乗り、駅から歩いて三分な立地にあるアパートまで歩く。

「…またね、ゆかりちゃん。連絡するから」

あっという間に二階建てのアパートに着いてしまい、夢のような楽しい時間にも終わりが訪れようとしていた。

欲が出たらキリがないのだけれども、香坂君と離れたくなくて繋いだ右手を離せずにいた。

「…寄って行く?」

香坂君の目を見ながら、大胆にも私から誘っていた。

「……ダーメッ!!俺はバイトだから遅い時間からだけど、ゆかりちゃんは朝早いんだから…」

「…香坂君の馬鹿」

私はちょっとだけ睨みつける様な眼差しで呟いた。

「あー、もうっ!!」

香坂君は右手を繋いだまま、私の顎に手を触れて少し上に傾けると同時に身体をドア側に押し付け、唇同士を深く重ねた。

「…っふぁっ」

「今日は我慢するけど、今度会った時は無理だと思うから…。あんまり可愛くオネダリしないで!…歯止め効かなくなりそうだから、おやすみなさい」

今度は唇に触れるだけのおやすみのキスをして、香坂君は駅へと逆戻りした。

ドアを開けると真っ先にベッドに寝転んで、香坂君の感触を確かめるように唇に指で触れた。

25歳になり、大人になったと思っていたけれど、専門学校生の時の恋のようにドキドキが止まらない。

いくつになってもトキメキってあるのかな?とか、ドキドキするのかな?って思っている内にメイクも落とさず、スーツのままでいつの間にか眠りに落ちていた───・・・・・・