ガチャッとドアが開いて玄関先に入ると、電気も付けずに「お疲れ様。大変だったね」って抱きしめられた。

有澄に抱きしめられたら、憤りも悔しさも落ち着いた。

いつの間にか、こんなにも心が落ち着く、心地良い体温になっていた有澄。

知らない間に大好きになっていたんだと再確認する。

「ゆかりからボードがやり直しだから遅くなるってメールが来た時は何でだろう?って考えてたけど…まさかの嫌がらせだなんて思ってもみなくて…嫌がらせだって知らされたのも日下部さんからだったし。色々と複雑な気持ち…」

「有澄…」

「ゆ、ゆかり、いきなり何!?」

「有澄にキスしたくなっただけ…」

頬に触れて唇に軽くキスをしたら、有澄が照れている様に感じられた。

不意打ちのキスは、いつもなら有澄からしかしないけれど今はしてみたくなった。

「ゆかり…」

有澄からのお返しのキスは息が切れる程の長いキスで、煽ってしまう結果になり失敗したと思った。

佐藤さんと作業している間にチラリと様子を見に来ていたのは知ってる。

有澄は企画開発部に入っても来なかったので、佐藤さんも居たし知らないフリをしてしまったのだけれど・・・。

自分の仕事が終わっても、相良さんを巻き込みつつ待っていてくれた。

「今日は遅いし、たまにはコンビニ弁当にしよっか?」

「賛成!」

先程、綾美に貰ったコンビニおにぎりを食べたのは内緒!

明日からはゴールデンウィーク。

嫌な事は忘れて、明日からはまた思い出作ろう!