私の顔を覗き込み、小悪魔っぽく可愛く笑う香坂君に胸が高鳴る。

今のお誘いの仕方は反則でしょう。

「…いいよ。私もまだ帰りたくない…」

何年も忘れていた恋の高揚感、胸の高鳴り、久しぶりに思い出した。

手を繋いでいる右手だけは暖かくて、香坂君の存在を確かめる様に少し強く握る。

「どこに行こうか?」

「…もう少し飲みます?ゆかりちゃんと話がしたいから」

「賛成!私も話足りない!」

私達は駅前にある居酒屋で飲み直す事にした。

カフェのバイト中に賄いは食べたと言っていたけれど、香坂君は物足りなかったらしく、ご飯系も締めに食べていた。

「…ゆかりちゃんに格好つけたくて、バーにしようとか言いましたけど、本当はお腹空いてました。ごめんなさい…」

居酒屋を出て駅に向かう途中、信号待ちをしている時に素直に謝る姿がとても可愛らしく、思わず顔がほころぶ。

「こちらこそ、ごめんね。気が付かなくて…。今度はご飯食べに行こう!」

「…今度っていつ?」

「会議前日と残業ある日は無理そうだから、それ以外の香坂君が行きたい日にしよっ」

「そんな事を言ったら、それ以外の毎日にします」