圧倒的な存在感を放つ日下部さんは、椅子に座った途端に皆が静まり返る。

「ゆかりちゃん、コレとコレ、どっちのデザインが好き?」

「私は右が好きです。柄がハッキリしていて可愛いです」

「実は私もこっちが好きなんだけど、踏み切れなかった!ありがとう」

私のデスクの隣は2年先輩の佐藤さん。

いつも穏やかで柔らかい雰囲気の先輩で、主にキッチンツールや浴室雑貨などを担当している。

大人可愛いデザインで売れ行きも好調、シリーズで揃えてるお客様もいると聞いた。

私の担当は主にポーチなどの小物雑貨、紙系のポストカードや便箋など平面な物が多い。

いつか私も担当してみたいデザインをしている、憧れの先輩なのだ。

「話変わるんだけど…私、今度、入籍するの」

「えぇー!?おめでとうござ…っ」

佐藤さんが小声で話してくれたのに、私は嬉しくて声が大きくなってしまい、口を手で塞がれた。

「秋葉、うるさい!お前は落ち着いて仕事が出来ないのか!」

「すみません…」

うるさいのは日下部さんだっ!

いちいち、私にばかり注意するな!

「つい嬉しくてすみません…」

「大丈夫だよ。私もいきなり言ってしまったから…。実はね、6月に挙式する事になったの。皆にはまだ言ってないんだけど…今日の帰りにでも話すね。それで、私にもウェルカムボードを作ってくれないかな?
本当はご好意で作って貰えるものでこっちから頼む物じゃないかもしれないけど、綾美ちゃんと同じで私もゆかりちゃんに作って欲しいの」

「わ、私で良いんですか?」

「私はゆかりちゃんのデザインが好きだから、ゆかりちゃんにお願いしたいのよ」

「私も佐藤さんのデザイン大好きです。両思いですね!」