室長は和成の住所をナビに打ち込み目的地を設定すると、意気揚々と車をUターンした。
もう翼に確認する事なく車を走らせる。
何だか聞いた事があるような軽快な歌を口ずさみながら。
翼は室長の分かりやすい感情の波にげんなりしつつ、でもこの単純でせっかちな室長の行動に感謝もした。
もし、翼が一人で和成の住所を知ったとしたら、きっと、うじうじ悩んで和成に会いに行くまでに相当の時間がかかっただろう。
下手したら会いに行けずに、この住所を眺めては涙を流す日々を送っていたかもしれない。
自分の中でちゃんと区切りをつけるためにも、和成に笑顔でさようならと言いたい。
きっと、別れの理由には、私のわがままやお姉さんぶったキツイ態度や和成にとっては嫌な事がたくさんあったはずだから。
翼は機嫌よく運転をしている室長の横顔を覗いて見た。
室長って私にとって何者なんだろう…
私自身、確実に室長に惹かれているのは間違いない。
でも、こんなにも私の事を無条件で愛してくれる人が突然現れた事にまだ半信半疑だし、突然現れて突然捨てられたという現実が待っているのではないかと、不安が襲ってくるのも確かだった。
「着いたよ」
「へ? もう?」
「そんな遠くないって言わなかったっけ?」
言ってないよ、聞いてない…
翼は、急激に心臓が高鳴り出した。



