城はアクセルを踏み込みながら、翼の顔は見ずに不機嫌にこう言った。
「今日以外はないからな。
居なかったら帰って来るまで待つ。
翼は今夜の内に絶対和成と話をするんだ。
いいな、分かった? 了解?」
翼はうんともすんとも言わずに、車の窓から外を見ている。
またどうせセックスの事でしょ?みたいな苛立たしさが横顔を見るだけで分かった。
悔しいけれど、その憶測はビンゴと言って過言ではない。
翼の性格は一筋縄ではいかない事はもう重々承知している。
自分が納得しなければ絶対に首を縦に振らない。
でも、そんな勝気な性格も、城は結構気に入っていた。
というか、翼の全てにおいて気に入らない所はない。
今の俺は、翼が俺の胸にナイフを突き立てたとしても、それを受け入れ笑顔でありがとうと死んでいくだろう。
恋に溺れた男の性(さが)だ、特に、ビギナー男限定の…
「じゃ、7時か8時くらいがベストかな?」
城は翼の機嫌を取りながらそう提案した。
「俺達もどこかで飯食おうか?」
翼はやっとこちらを向いた。
「腹が減っては戦はできぬって言うだろ?」
首元が開いた濃紺のワンピースは翼によく似合っている。
翼の白くて長い首に、二連のパールのネックレスが映えていた。
「いや、終わってからでいい…
何だかすごく緊張してて、お腹も全然空いてないから。
だから、早くなっても構わないから、もう和成の家に向かっていいからね。
居るかもしれないし、居ないかもしれないけど…」
「居るよ、絶対に…
一人じゃないかもしれないけど」



