「ねえ、抱いていい…?
いや、抱きたいんだ…」


俺は翼を後ろから抱きしめてそう言った。
でも、翼は絡みつく俺の腕をゆっくりとほどき、何も聞こえないふりをしてフルーツを食べている。

こんな風に自分の思い通りにいかない時の俺は、一瞬で中学生以下の坊主になり下がる。
これもきっと感情の一種なのだろう、以前の俺にはなかった事だから…

俺は、美味しそうに食べている翼のフルーツをわざと取り上げた。
きっと、フルーツを食べたい欲が強過ぎて、俺に抱かれてしまうだろう。
もうこの時点で小学生以下だ。

翼は俺を見てぷいっと目を反らした。


「別にもうおなかいっぱいだし」


翼はそう言うと、新しく買い替えた大きめのベッドに横になった。


「明日は会社なので先に寝ますね」


翼はさっさとタオルケットをかぶり、ベッドの隅に横になった。

俺は泣きそうになる。
イ~~ッと声を発したくなる。
でも、さすがにそれは抑え込んだ。
抑え込まなきゃ、よちよち歩きの赤ちゃんと同じレベルだ。

でも、俺はあきらめはしない。
静かに翼の隣にもぐり込んだ。
俺に背中を向けている翼の腰を優しく抱き寄せる。

すると、急に翼が俺の方へ向き直った。
俺を見て、翼は大きくため息をつく。