やっぱり、駅でタクシーを拾えばよかった…
土曜日の夜にもなると、流しで走っているタクシーは中々いない。
俺はとりあえず家に向かって歩く事にした。
そんなに遠いわけでもないし、最悪歩いてでも帰れる場所だ。
そう思ったら、大通りを歩くのを止めた。
車の音がうるさいし、週末の夜だから人の数も多かった。
一本奥の道に入り込み静かな住宅街を歩く方が、何も考えずに歩く事ができる。
どれくらい歩いたのだろう…
全く世間にアンテナを張っていない俺でも、その異変には気が付いた。
住宅街の中でもコンビニや居酒屋が軒を連ねる賑やかな場所に隣接する小さな公園のベンチが、いきなり俺の目に飛び込んできた。
街灯に照らされたベンチの上で、酒に酔っ払ったらしい女の子がガッツリ寝ている。
俺には珍しく歩くのを止め、街路樹の隙間からその女の子の様子を窺った。
かろうじてベンチには座っているように見える。
でも、顔は明らかに寝ていた。
足元にはビールの空き缶が何個か転がり、眠っているはずの手にはワンカップ小関の瓶のコップが握られている。
それも、危うげに…
あ、ほら、こぼれるぞ…
どういうわけか、俺はその女の子から目が離れない。
きっと、こぼれそうなワンカップ小関が気になっているからに違いないし、酔っ払った女子を見るのも久しぶりだったからだ、と思う。



