眠り王子が完璧に目覚めたら




でも、城は、これ以上翼を泣かせる気もなかった。
泣いている顔より笑った顔の方が数倍好きだし、泣いている顔は何度も見るけれど、笑っている顔はほんの数回しか見た事がないから。


「その件は後で考えよう。
整理をつけるために会って話したいのなら、そうするしかないだろ。

それより、まずは片付けからだ。
夜までに頑張って終わらすぞ。

そしたら、俺が最高のディナーを作ってやる」


翼の顔が不機嫌からご機嫌に変わりつつある。
城はそれが嬉しかった。
ミカン類しか食べてないはずの翼は、きっと栄養失調になっている。

今までの人生で、ほとんどのスキルを身につけてきた。
ほとんどのスキルは仕事や自分自身を高めるために役に立ったが、一つだけ無駄な物があった。
でも、その無駄だったスキルが今夜やっと日の目を見る。

俺は料理をする事が得意で、そして大好きだ。
今までの俺の人生には、この料理ほど空しいものはなかった。


「室長、今日の献立は何ですか?」


「チキンソテーのトマトガーリックソースがけに、緑黄色野菜たっぷりのペペロンチーノ風パスタ」


「何だか、ニンニクばっかりなんですね…?」


「ニンニク、嫌いか…?」


翼は満面の笑みで首を横に振る。


「大好きで~す」


城はたったそれだけの事で、翼を抱きしめた。

料理を作るってこんなに最高な事だったんだ…

俺の中のウキウキワクワク感が、俺を最高の笑顔にする。