眠り王子が完璧に目覚めたら





室長は段ボールに占領されているキッチンから、パンと野菜ジュースを持って来た。
そして、床の上に座り、その隣に翼を座らせる。


「よし、じゃ、これを食べたら、まずはそのテーブルを探そう」


室長は翼の分のミカンとグレープフルーツも持って来ている。
そして、それをナイフも使わずに綺麗に剥いて、翼の口の中に入れてくれた。
翼は感動で胸が熱くなった。
ここしばらく一人で寂しい毎日を送っていた私は、きっとこういう人の温かさに飢えている。

室長の買ってきたミカンはめちゃくちゃ甘い。
私は嬉しかったり美味しかったりで、酔っ払ってもいないのに涙が溢れた。


「酸っぱかったか?」


他の人にとっては、能面王子だったりロボット人間かもしれないけど、私にとって室長は、優しい癒し王子だ。


「いや、めちゃくちゃ甘いです…」


室長は自分もそのミカンを食べてみる。
きゃ、美味しいみたいな顔で私を笑わせた。


「だったら、もう泣くな。
そのクソ野郎の事を考えて泣くんだったら、俺は許さないからな。
甘くて美味しくて嬉しいの涙だったら、許してやる」


室長の言っている事はハチャメチャだけど、でも、こんなに単純でストレートな人はいない。
そんな室長のおかげで、和成の事を整理しなきゃって何となく思えている自分が不思議だった。