眠り王子が完璧に目覚めたら




俺は二人からそう言われ、とりあえず空を見上げてみた。
確かに、大きな満月が都会の空に浮かんでいる。

だから…?

この冷めた感覚が、俺がこけしと呼ばれる所以だった。
あのおばさんが言うように、こんな満月の夜だからもしかしたらその運命とやらの女性に出会うかも?なんて、死んでも思わないし、ワクワクやウキウキやそんなものも全く湧いてこない。

太一と陽介は、無表情で立っている俺の事は気にも留めずに、勝手にウキウキして楽しんでいる。


「お前らは電車で帰るんだろ?
俺はタクシーで帰るから、じゃあな」


マジで早く帰りたい。
元々、飲み会だってほとんど興味のない俺が、今日は占いの館までつき合った。
そりゃ、疲れるだろ…


「城、何かあったらすぐに連絡するんだぞ」


お節介屋で誰よりも俺が大好きな太一がそう言っている。


「何があるんだよ?」



「胸がキュンとしたり、心臓がドキドキしたり」


くだらない。
俺は究極に冷めた目つきで二人を見た。

面白がっている二人を無視して俺は大通りに向けて歩き出す。
駅前でタクシーを拾うのは止めた。
あいつらと早く別れて一息つきたい。



でもどこを歩いても、満月の大きな月は俺についてきた。