「俺の事はどうでもいいんだってさ」
三人で歩いていると、訳の分からない事を太一が話し出す。
「あの占い師のおばさんだよ。
俺の話はあっという間に終わって、後はずっと城の話をしてた」
「城の??」
陽介は一人店の外にいたため、話が見えない。
太一はもうすでに顔が緩んでいた。
「一番近い満月の夜に、眠っている本来の城が目を覚ますんだと」
陽介は目を丸くして二人を交互に見ている。
「ああ、それね。
俺も同じ事を言われたけど、全く意味が分からないよ」
太一は酔いもすっかり覚めているのか、にやけ切った顔で二人の前に立つ。
「俺が丁寧に説明してやるよ。
近い満月の夜に、城は運命の相手に出会うらしい。
その時初めて、城の眠っている全ての感情が目を覚ます。
あのおばさんの話では、城は別人に生まれ変わるらしいぞ」
陽介も半分呆れている。
占い師のくだらない戯言を信じ切っている太一を横目で見ながら。
「俺は眠ってなんかいないし、感情だってちゃんとあるよ。
普通の人より、大人しいだけだと思うけど」
俺がそんな事をボソボソ言っている横で、太一と陽介が空を見上げている。
「城、ヤバいぞ…
今日は、最高の満月の夜だ…」



