翼は室長にそう伝えながら、頭の中であの東京での自分の行動を必死に思い起こしていた。

会社での研修を済ませた二日目の夕方、和成の家を住所を頼りにウロウロ探し回った。
怖い女かもしれないけど、和成の家の前で和成を待つつもりだった。
そんな事でもしなければ、和成と話す事すらできなかったから…

やっと見つけたそのマンションの郵便受けの名前を見て回った。
神経質な和成の事だから必ずポストに名前を出している。

でも、和成の住所のポストには違う人の名前が出ていた。




「相当、酔っ払ってたよ」


翼は室長の言葉で一気に現実に呼び戻された。

そう、あの時のショックは今でも忘れない…
あの一人ぼっちの夜は、浴びる程お酒を飲んで現実から逃げ出したかった。


「色々あって、バカみたいに飲んだのは確かです…
東京に知り合いもいなかったので、ただ飲むしかなくて…」


あ~、ヤバい…
あの時の自分が可哀想過ぎて、また涙が出てくる。


「ふ~ん」


室長は少しだけイラついた目になっている。


「もし、その時に、室長に迷惑をかけたのなら、本当にごめんなさい…」


いつの間にか届いていたカクテルを、室長は私の手に持たせる。
そして、自分のビールを、私のグラスにカチンと合わせた。


「そんなくだらない和成なんて、こっちから捨ててやれ…」



「…は??」