眠り王子が完璧に目覚めたら




室長は大して何の問題もないみたいな顔をして、キャスター付きの椅子を元の場所に戻した。


「それと、もう一つ、これも伝えといて。

俺の席は、俺が決めるって。
もちろん、君の隣だから。
それも譲れないかな」


室長はそう言うと、ちょっとだけ口角を上げた。
全く笑わない室長のその仕草は、何だかかなり私の胸をざわざわさせる。


「あ、それと…」


室長はそう言うと、自分のデスクに戻り綺麗にファイルされた資料を持って来た。


「このイベントのコンセプトをしっかり読んで、君の思い描くプロジェクションマッピングのアイディアをまとめといて。
いい物を作ろう。
俺が全力で協力するから」


室長はありったけの甘い言葉を並べて、私を持ち上げたり褒めたり大切にしてくれる。
まだこの会社に来てたったの二日目で、室長のこの甘やかしぶりにはついていけないし、どこかで疑ってしまう自分がいる。

でも、何で…?
私は一体どこで室長に会ったのだろう…?


「室長…
なんでこんなに優しくしてくれるんですか…?」


室長の目には、冷やかな中に居心地の悪そうな愛しみが見える。
そして、短くなった私の髪をさりげなく横に流して、はにかんで微笑んだ。


「何でだろうな…?
あのおばさんに俺も聞きたいくらいだよ…」



あのおばさん…?
色んな意味で私も室長に釘付けみたい…