結局、俺が太一に付き合う事になった。
別に太一が何を言われようと知ったこっちゃないが、この二人の頼みは中々断れない。
唯一、自分の中の人間らしい一面だと思っている。
人を思いやるとか、気持ちを推し量るとか、そんな感覚を俺は持ち合わせていないけど、この二人に関してはしょうがないと思って何でもやってしまう。
ま、年に一、二回はそんな事があってもいいだろう。
「はい、次の人どうぞ~~」
半分寝ている太一を起こして、その暗幕で覆われている個室に太一を連れて行った。
太一がちゃんと目を覚ましているのか定かではないが、俺はすぐさまその部屋を出て行こうとした。
「そこのあんた、ちょっと待った。
そこの眠り王子、あんたの事だよ!」
後ろの方で甲高い声が聞こえたと思ったら、助手のような人達が俺を迎えに来た。
「いやいや、俺じゃなくて、あいつが見てもらう事になってるんで。
俺自身、お金払う気もないですし、こんな占いとかも全く興味ないですから」
すると、後ろの方でまた甲高い声がした。
「そこの眠り王子!
あんた、そろそろ目覚めるよ!
満月の夜に、突然出会うから、覚悟しときなさいよ!
はい、行ってよし」
いつの間にか、助手の人達はいなくなった。