俺達三人は、新宿のいわゆるいかがわしい界隈に入って来た。
雑居ビルが立ち並ぶ中、ひと際目立つ古い建て物がある。


「あそこみたいだな」


太一はそこに向かって歩き出した。
俺と陽介は顔を見合わせてため息をつく。

そのビルの前には3、4人の人が並んでいた。
俺達は太一に付いてその列に並んだ。


「てかさ、お前一人が見てもらうのに、俺達が並ぶ必要ある?
それも大人の男が二人も…」


陽介がそう吠え出した。
ごもっともだ。


「じゃ、俺に付いて来るのは一人でいいよ。
一人は外で待っててくれればそれでいい」



「じゃ、城、行ってきて」



「はあ?? 何で俺だよ」



「だって、お前は、感情が欠けてる人間だから、太一が何を言われても冷静でいられるだろ?
考えてみろよ、今さら、その女性とは結婚はいけませんなんて言われてみろ。
俺はそんな不幸な話、聞きたくない」


太一は半分酔っ払ってるせいで、自分の事で揉めてるなんてこれっぽっちも分かっていない。


「太一は酔っ払ってて覚えてないが、きっとおちだぞ。
俺は、嫌だね…
面倒な事に巻き込まれたくないよ。
結婚式にだって参加するのに…」