私は今になって桜井さんが話していた言葉が理解できた。

ロボットだと思って接した方がいい。
だって、室長の言っている事は、凡人の私には全く理解ができない。
たまにエスパーのように知りもしない事を当ててみたり、私の質問はまともに一度も答えてくれた事はないし、瞬きもしてないかと思うくらいの無表情が、突然、人懐っこい顔になったり…

うん…?
それは、桜井さんからも聞いていない。
全くの無表情人間だとは聞いたけど、私は何度か違う表情の室長を見ている。

でも、やっぱり、ロボットにしとこう…
ただでさえ、和成の事で身も心もボロボロなのに、新しい職場で室長にまで振り回されたくない。


私は、どれ位の時間、ぼんやりと考え事をしていたのだろう。
室長はいつの間にか自分のデスクに腰かけて私を見ていた。


「君の机、どうしようか…?」


「え? 私の机ですか…?
桜井さんの隣に準備してもらってます、けど…」


ああ、まさか、もしや…


「秘書って、普通は、この部屋にいるんだっけ…?」


私は慌てて否定した。


「いや、いないと思います!
いても、この部屋の外の近くとか、ドアの外とか…
はい、確か、ドラマとかではそうでした」


自分の必死感に泣けてくる。


「そうなの?」


「そうです!」


「そっか、残念だな」


「はい」



一体、この会話って何なんだろう…