私は唖然とした。

髪を切った…?
そう、私は、最近、腰まであった髪をベリーショートに切ったのは確かだった。
髪質が柔らかく色素も薄い栗色の髪は、私の自慢だった。
小さい頃からずっと長い髪で、バスに乗れば後ろに座っているおばさんが綺麗ねと触るくらいの自慢の髪だった。

そんな大好きだった長い髪を、東京に越して来る前日に思い切って短くした。
和成にフラれて前へ進めない私は、前へ進むために髪を切る事くらいしか思いつかなかったから…

でも、何で…?
そんな事を室長が知ってるの…?


「ど、どうして、そ、そんな事を知っているんですか…?」


私は驚きと恐怖で声がまともに出ない。


「そんな事はどうでもいいよ。
ただ、あの髪、すごく綺麗だったのになって思っただけ」


すると、また室長の目が愛猫を見る目に変わった。


「そのベリーショートは君だから似合うんだよ。
普通の女の子がやったら、ただのちんちくりんだ」


は…?
それは、褒めているのでしょうか…?


「あ、それと、秘書の仕事って言われても、俺もあまり分からないけど、ま、とにかく俺の近くに居てくれればいいから」



「え…?
という事は、私は室長のボディーガードみたいな感じでしょうか…?」



室長はまた私から三歩程離れた。
両手の親指と人差し指で四角形を作り、フェインダーを覗くふりをして私を見ている。


「その髪型もこうやって見れば、最高に似合ってるね。

君がどんなに変身しようが、俺は必ず見つけるから…」