太一も陽介も、どうしても俺の今のあだ名を俺の口から言わせたいらしい。


「今の会社では…
ロボット室長とか、仮面の下もまた仮面とか、こけしの上をいく無表情とかかな」


二人は爆笑している。


「こけしって… 
城、こけしに勝ったらヤバいぞ…」


これも毎回のルーティンだ。
こけしのくだりで大爆笑するこの単純な二人は、本当に幸せ者だと思う。
俺は毎回このくだりに付き合うが、一度も面白いと思った事はない。

二軒目のショットバーでまたひらすら酒を飲み、やっとこの会合が終宴を迎えた。


「あ、そうだ、もう一軒つき合ってほしい場所があるんだ」


半分酔っ払った太一がそう言いだした。


「新しく家庭を持つ事になった今、俺は、有名な新宿の裏通りの母に助言を頂きたいんだ。
そこの通りを曲がった所にいるらしいから、ごめん、一緒につき合って」


新宿の裏通りの母??
裏通りがついてる時点で、ダメだろ、占い師としては。


「陽介が付き合ってやって、俺は帰るわ」


俺がそう言うと同時に、陽介は俺の腕を掴んだ。


「城、逃げるなよ…
俺だって、そんな妖しい所には行きたくないし。
一緒に行くぞ」


マジか…
新宿の裏通りの母め。
せめて大通りにしろよ。