「はい、それは分かってます」
すると、その母はレースの向こうで笑みを浮かべた。
「運命によって結ばれた二人です。
私の手助けがなくても、あなた達は必ず出会っていた。
結婚、おめでとう」
最後にそう言うと、裏通りの母は後ろに下がってと二人に合図した。
その合図と同時に次の人達が入って来る。
「城、行こう」
翼と城がそのビルから出た時、真っ黒な空に小さいけれど満月が見えた。
「あのおばさん、何者なんだろう…?」
翼は城の手を取り歩き出した。
きっと、私達二人の人生は、この満月に見守られている。
満月がある限り、私達は必ず幸せになれる。
「あのおばさん、きっと、私達の恋のキューピットだよ」
「キューピット?? それはないない」
「じゃ、何?」
「ただの新宿の裏通りの母だよ」
翼は城にしがみついて笑った。
「新宿の裏通りのおばさん、どうもありがとう~」
そう言って城は、翼をきつく抱きしめた。
本当に本当に、ありがとう…
僕にこんな素敵な人を巡り合わせてくれて…
城はあの日、初めて出会った日の翼を思い出していた。
酔っ払ってベンチに座る翼を、大きな満月が照らし出してくれた。
「ほら、そこの眠り王子、ここにお前のエンジェルが座ってるよ」って…



