城は、翼の短い沈黙にさえ、もう逃げ出したい気分だった。
俺のノミのような小さな心臓は、更にもっと小さくなり、きっとあと数分で俺の魂と共に消えてなくなるだろう。
まるで、死刑判決を待つ囚人のようなそんな恐怖さえ覚えていた。
この最悪な流れでのプロポーズになったけれど、プロポーズをした世の中の男性は皆、こんな気持ちになるのだろうか。
城は、この沈黙の間、隣に寝そべる翼の顔や息遣いすら確認したくなかった。
「その条件なんだけど……」
「あ、うん…」
「全然、いいよ」
え? 全然いいよって??
俺の話をちゃんと聞いてたか…?
城はやっと翼の顔を見た。
隣で肘をついて城の顔を見つめる翼の目には涙が浮かんでいる。
「ごめん… 怒ってるんだろ…?
何か、せっかくのイブの日に、こんな変な流れの中でプロポーズしてさ」
起き上がった城に続いて翼も起き上がる。
翼は伏し目がちな城の目の前に座り、最高にいい笑顔を城に見せた。
「私、今日、城からのプロポーズを待ってたんだ…
城は、きっと、この日にプロポーズしてくれるって思ってたから。
だから、もし、城がプロポーズをしなかったら、私からしようって思ってた。
良かった…
逆プロポーズにならなくて…」
城は目を丸くしたままこう答えた。
「でも、年内だぞ…?
それでもいいのか…?」
翼は城の首元に抱きついた。
「全然いいよ…
今日でも、明日でも、いいくらい」



