最高に素晴らしいお風呂タイムだった。
俺は背中から翼を抱きしめ湯船に浸かっている時に、もう死んでもいいとさえ思った。
こんなに極上の天国をお風呂で体感できるとは…
しがない人間のちっぽけな人生にも、こんな極上の天国が存在する。
そして、愛する人を見つけた人間にしかこの天国は与えられない。
城はお風呂に浸かりながら、この家で翼と暮らす事を考え出した。
翼のあの部屋もいいけれど、このお風呂があるこの家は城にとってはあらがえない程に魅力的だ。
そんな事を考えながら、城はベッドルームでくつろぐ翼の横に寝転んだ。
「なあ、今ちょっとだけ思ったんだけど、翼の家もいいけどさ、この家で二人で暮らすのもありかななんて考えてる」
すると、寝転んでる城の隣に翼が肘をついてくっついて来た。
「私も!
私も、同じ事、考えてた。
だって、だってさ、このマンションだったら、今の会社からもめちゃくちゃ近いし、だから夜の二人の時間がたっぷり持てるし」
もうすでに翼の頭は、今の会社で働く前提か……
「それに、もし、城が、私を今の会社で働かせてくれるのなら、そしたら毎日一緒にお風呂に入る。
ううん、私も一緒に入りたい…」
城は完全に降参している自分がいる事に気付いている。
でも、ここで、全てで降参するわけにはいかない。
城は最後のカードを出す決意を固めた。
「いや、翼がそんなに今の会社で働きたいのなら、俺から一つ条件がある。
年内に結婚する事。
とりあえず籍を入れたい。
そうしてくれるなら、俺も譲歩して翼の働く事を認めるよ」
というか、俺は何様なのだろうか…?
こんな大事な事柄を、取引の一つに使うなんて…
あ~、頼む…
翼、首を縦に振ってくれ……



