城も照れくさそうに笑いながら、小さな声でメリークリスマスと言った。
30年近く生きてきたが、この言葉を使うのは生まれて初めてだ。
子供の頃だって、クリスマスとか正月とか何も興味を持てなかった俺は、メリークリスマスとか明けましておめでとうとか、絶対に口にした事はない。
「え? 何ですか??
何も聞こえないですよ~~~」
こんな時の俺は、翼にとって最高に遊び甲斐のあるおもちゃになってしまう。
「いいから、ほら、おかわりは?」
城はシャンパンを空になった翼のグラスに注ぐ。
でも、半分まで注いですぐに手を止めた。
今日は大切な話をしなきゃいけないのに、翼を酔わせるわけにはいかない。
城は、翼の手からグラスを取り上げ、代わりに取り皿にたくさんのご馳走を載せて持たせた。
「まずは料理の感想を聞かないとな」
単純な翼はもうシャンパンの事は忘れている。
ローストビーフを頬張り、幸せそうな顔で城を見てウィンクをする。
「最高に美味しい~~
城って、天才~~~、大好き~~~」
その一言で城はご満悦になる。
クリスマスも捨てたもんじゃない、愛する人が近くに居てくれるなら…
それ限定だけれども…



