今まで人の事を思いやって何かをしたことがない城は、自分本位な考えしか浮かんでこない。
城は室長室のドアを閉めると、下ろしているブラインドを全部開け放った。
そこには、今まで城が目にする事のなかった日常の世界が広がっている。
皆、真面目に仕事に取り組んでいる。
少しでも城に認めてもらおうと必死に頑張っている人間も少しは知っている。
今までの俺は、紙にプリントされた実績や、データに収められた映像やプログラムで、人間の価値を決めていた。
俺にとってはそれが全てだったし、その先にある人間の感情なんてどうでもよかった。
結果を出せずに悔しいとか、思うように仕事がはかどらずもどかしいとか、人間はそんな感情と闘いながら生きている。
そして、感情というものを持った人間は、本当に面倒くさい。
でも、今の俺は、きっとここにいる全ての人よりも、感情に乗っ取られ支配されている人間だ。
現に、翼が可哀想で不憫で、初めて哀しみという感情を体感しているわけだから、一番性質が悪い…
城はもう一度部屋全体を見渡し右往左往している翼を目にすると、耐え切れずにブラインドを下ろした。
冷静に真剣に考えよう…
翼が傷つかずに済む方法はきっとここにいる皆のためにもなるはずだから。
そんな事を考えていると、向こうの仕事を済ませた翼がここへ帰って来た。
「おはようございます、室長。
今日は、いつもより早いんですね…」



