翌日、城はいつもより早めに会社に行き、普段はあまり気にも留めない空間デザイン室の様子を見ていた。
基本、城はデザイン室の人間が何をしようが何を考えようが全く興味はないし、仕事さえちゃんとしてくれれば自由に動いて構わないというスタンスだ。
城はデザイン室の一番奥にあるコーヒーメーカーの前で、ゆっくりコーヒーを飲みながらさりげなく観察をした。
そして、明らかに違和感を覚えたのは、皆、翼の存在を無視していることだ。
異動してきて新入社員と同じ扱いの翼は、朝この部屋に入ってくる人間には必ず挨拶をする。
それも目を見てしっかりと。
しかし、どういうわけか女子も男子も見て見ぬふりをする。
人によっては、あからさまに迷惑そうな顔をする人間もいた。
そうか…
理由は何となくは察しはつくが、翼はこの部屋で無視をされているいうことか…
多分、翼の人間性で嫌われる事はないはずだから、理由は一つしかない、俺だ…
城はそう気付くと、翼の健気な対応を見る事ができなかった。
俺にとっての目の上のたんこぶは翼だ。
人間は愛する人ができた時点で、大きな弱みを持つ事になる。
俺の自分勝手な行動が、翼を窮地に追い詰めていたのか?
城は怒りよりも哀しみが湧いてきた。
翼の抱える涙と苦悩を思えば、息ができないくらい苦しくなる。
城は小さくため息をつき、もう一杯コーヒーを淹れて自分の部屋へ帰る事にした。
でも、その間にも目に入ってくる翼の一人ぼっちの構図は、胸の奥をジンとさせ喉に何かがつかえたようなそんな気分にさせた。
俺は何をどうすればいいんだ…?



