「ほら、デザート食べよう」
でも、翼はピクリとも動かない。
「私、ずっと考えてて、室長室のあの場所にデスクを構えてそれでいて秘書の仕事じゃなくて、デザイン関係のそれも空間デザイン室の人達と同じ仕事をしているのはどうかなって…
私があの場所にいること自体が、きっと問題なんです…」
城はまた顔つきが変わる。
小さくため息をつき、目を細めて翼にこう聞いた。
「誰かに何か言われたのか?」
翼は大げさに首を横にぶんぶん振る。
確実に、誰かに言われてるな…
「わ、私が、そう思ってるんです…
でも、私は秘書の仕事なんてやりたくない…
デザインの仕事を続けたい…
室長、もう一つお願いがあります。
この選考を辞退するのと一緒に、私をデザイン室に戻して下さい。
室長と私が付き合っているのなんて、あっという間に噂で広まります。
だって、室長はそんなの隠しておくタイプの人間じゃないから。
どう考えても、恋人同士で室長室の密室に二人きりの仕事って、周りの人に誤解を与えます。
私…
嫌なんです…
私はいいんですけど、室長が変な風に言われるのが嫌なんです……」
城はまた鼻で笑った。
くだらないを通り越し、阿保らしいみたいな蔑んだ笑みを浮かべて。
「ダメだ。
翼は俺の近くにいる。
それに、人が何を言おうが俺には何も響かない」
城はデザートを食べる前に、温くなったコーヒーを飲み干した。
「翼…?
デザートは食べようよ。
…ほら」



