城はしばらく黙って翼の様子を見ていた。
このタイミングでの涙の理由がさっぱり分からない。
城はポケットからハンカチを取り出し翼に渡すと、翼はそのハンカチを見てまたおいおい泣き出した。
恋愛に不慣れな城は、こうなった時にどうしていいのか分からなくなる。
女性はどんな時に泣くのか、どんな風に声をかけるのが最善なのか、全く分からない城はほとんどお手上げ状態で翼を見ていた。
「ご、ごめんなさい…
こんなに泣いてしまって…
本当は泣くつもりはなかったんです…
だから、私は泣かなかったという事にして話を聞いて下さい…」
いや、それは無理っしょ…
城は頷く事はせず、でも優しい眼差しを翼に向けた。
「どうしたの? 何かあった?」
城が穏やかにそう聞くと、翼はハンカチで涙を拭きながらコクンと頷いた。
「し、室長、わ、私……
私、デザイン作成に息詰まてって、だから、もう、選考会は辞退したいんです…
私には、責任や負担が大き過ぎる事に、今さらながら気づいて怖気づいたみたいで、何もアイディアが浮かんでこなくなって…
だから、その、せっかく私を推してくれたのに、室長には申し訳ないのですが、私、辞退します…」
城は目を細めて冷静に翼を見ていた。
この間まで、すごく張り切って仕事に取り組んでいたのに、何なんだ?
俺に内容はまだちゃんと見せてはくれないけど、確実にしっかりリサーチをして、データを集め今までの作品を何度も見て、誰よりも真剣に取り組んでいたのを俺は知っている。
「理由は、それだけ?」
泣き過ぎて真っ赤になった鼻をした翼は、俺の目は見ずに小さく頷いた。



