眠り王子が完璧に目覚めたら




翼がその店に着くと、その5分後には城が入ってきた。
急いで来たらしく、かなり息が切れている。


「そんなに急がなくてもよかったのに…」


翼がそう言うと、城は満面の笑顔で首を横に振った。


「俺がそうしたかったの。
一分一秒でも翼に早く会いたかったから」


翼はもうすでに泣きそうになった。
こんなにも私の事を想ってくれている室長に、どう伝えれば上手く伝わるのだろう。
デザイン室の皆を巻き込まないで室長がすんなり納得してくれるようなアイディアは、まだ私の中には浮かんでこない。


「腹減った。
とりあえず食べよう」


室長はメニュー表を開くと、私に確認も取らずにどんどん注文をする。
私の好みは全部頭の中に入っているとでも言いたげな、俺様風な目で私を見ながら。


「飲み物は?
最初はワインにする?」


翼は城の持っているメニュー表を取り上げパタンと閉じた。


「今日はお酒は飲まない。
すみません、オレンジジュースを二つお願いします」


「え? 俺も?」


城は残念そうに翼を見た。


「ううん、私の大切な話が終わって、室長が納得してくれたら乾杯しよう。
だから、少しだけ待っててね」


城は目を細めている。
何か勘づいているのか訝しい目をして私を見ている。


「翼…
一つだけ言っておく…

別れるとかいうのは無しだからな。
そんな事言われて乾杯なんて、死んでもあり得ないから」