桜井さんは本当に困った顔をして静かに頷いた。
「小牧さんを室長室から他の部に移動させようとする署名活動が始まって…」
翼は愕然とした。
そんなに私は皆に嫌われてる…?
でも、確かにそれはしょうがないのかもしれない…
そう思われても、私は何も反論できないもの…
「小牧さんも知ってるようにこの会社は室長で持ってるようなもので、今までの室長は人間的には問題はあったけど、仕事に関しては実力主義それは譲らない人だった。
だから、皆、何だかんだ言っても室長の事は尊敬してたしついていった。
もし、ここで小牧さんのデザインが採用されたとしたら、空間デザイン室は崩壊するかもしれない。
そして、室長を尊敬していた人達は、きっと皆離れていく」
翼は息ができないくらいに動揺した。
私のせいで室長のキャリアを傷つけてしまう…
「だから、私や小牧さんを擁護する人達と話した結果、小牧さんにお願いがあるんだ…」
「な、何でしょうか…?」
「混乱を招かない方法は多分これしかなくて…」
桜井さんは意を決して翼を見た。
「小牧さん自身が、このデザインの選考から下りてほしい。
苦渋の決断だけど、それが一番傷が浅くて済む方法なの…
小牧さんが下りた時点で、選ばれるはずだったデザイナーに声がかかると思う。
彼はもう前からちゃんとそのデザインは準備してあるから、それを提出するだけ。
ダメかな…
小牧さんのためにも、その方がいいと思うんだけど…
どう…?」
翼は口を開けば泣いてしまいそうだった。
だから、小さく頷いた。
私のためより、室長のため…
室長のキャリアを傷つけたくない…
室長を守りたい…
それが、今、私がしなきゃいけない事なら…



