翼は暇になると、何度もそのイベント会場となる場所へ足を運び、そこのどの位置にスクリーンが建てられるのか、そしてそのスクリーン以外に何か使える物はないのかと、視察に余念がない。
どんな形であれこういうチャンスをもらえた事は、翼にとっては最高の贈り物だった。
だから、例え採用されなかったとしても恥ずかしい物で終わらせたくない。
翼の今やる事は原案を作ること。
そして、その原案に沿ってディレクターやプログラマーが音や光そして映像を入れ込んでいく。
その先の作業はチーム一丸となる。
でも、その骨組みを素晴らしい物にしたいと、翼は毎日必死に真面目に取り組んだ。
翼が入社して二か月が過ぎた頃、会社内で嫌な噂が流れ出した。
そして、その噂の種が翼の耳に入ったのは、新しい企画デザインの選考会の一週間前の事だった。
その頃の翼は仕事に没頭するあまり、自分のデスクからあまり動かない生活を送っていた。
パソコンと格闘しているか、あとは外に視察に出ているか。
城も政府に依頼されたデザイン関係の仕事で会社にいない事が多く、お互い忙しく過ごしていた。
でも、城は室長室に帰って来ると、すぐに翼に絡みたがる。
翼はその度に城をきつく睨んだ。
翼の真面目な性格は、そんな会社の中での公私混同の状態を良しとしない。
城はその度に軽く落ち込んだ顔をして、とっとと家に帰るぞというのがお決まりの文句だった。



