「…和成、私ね、和成に謝りに来たの…
本当は、もっと色々話がしたかったけど、でも、今日は彼女がいるみたいだし…」
翼は感情を押し殺しているのが手に取るように分かる。
きっと、大人の女性を必死に演じているのだろう。
「俺はもう話する事なんて一つもないよ。
翼に何の未練もないし、東京での今の生活に満足してる。
前にも言ったと思うけど、逆に翼と別れて清々しているし、悪いけど翼の事を思い出したりも全くしない。
だから、こんなストーカーみたいな真似やめてくれよ。
マジで怖いんだけど」
城は息をするのがやっとだった。
もう無理だ、もう無理だと思いながら、それでも翼の事を想い必死に耐えている。
でも、そんな翼も言われっぱなしではなかった。
和成のどの言葉が翼をそうさせたのか分からないが、顎をキュッと前へ突き出し和成の事をジッと見ている。
「確かに、私がここの住所をどうやって調べたのかって怖くなるかもしれないけど、でも、別に和成を困らせるためにここに来たわけじゃない。
多分、きっと、別れの原因に、私のわがままや悪い所がいっぱいあったんだと思って、それを謝ろうと思ってここへ来たの。
だって、長い事つき合ったんだもん。
そんな簡単にさよならっていうのは、中々私にはできなくて…」
翼がそう言って体を半歩前へ進めた時、和成は翼の肩を押して外へ突き出した。
その時、俺の中で何かがプチッと切れた。
それは素早く一瞬のそのまた一瞬の出来事だった。



