城は耳を塞ぎたくなった。
そのチャイムの音が、悲痛な翼の心の叫びに聞こえるから。
城の目から見ても、翼は確実に開き直っている。
さっきまでのオドオドした翼はもうどこにもいない。
ガチャ…
やっとドアが開いた。
「翼…?
何してんだよ? こんなとこで…」
城の隠れている場所は、和成の部屋と横並びにあるためにどう頑張っても和成の顔は見えなかった。
でも、声は確実に聞き取れる。
それだけ、城はその部屋に近い場所に隠れていた。
そして、幸運な事に、翼の横顔ははっきりと確認できる。
「…あ、久しぶり。
…えっとその、元気だった?」
一分前の威勢のいい翼はもう消えていた。
そして、奥の方でがちゃがちゃ音がする。
「あ、美香は来なくていいから、奥の部屋で待っててくれない?」
どうやら和成は、新しい彼女にそう言っているらしい。
翼は…?
翼は泣きそうな顔をして下を俯いている。
「何しに来たの?
ってか、何でここが分かったの?
どうやって調べたんだよ?」
和成の矢継ぎ早の質問が、城の胸をざわつかせた。
まだだ、まだ飛び出しちゃ絶対ダメだ…
翼は何も言えずにまだ下を向いていた。
「ねえ、俺達はもう別れたんだ…
こんな事やめてくれよ」
城は何度も深呼吸をする。
そうでもしなきゃ、ターミネーターのような冷淡無情のロボットになって和成を殺してしまうかもしれない。



