眠り王子が完璧に目覚めたら




彼女の口から悪態がついて出た。
俺は、ますます興味をそそられる。

でも、その前にやっぱりあのカップ酒を酔っ払っている手から離したい。
俺はジャングルジムから下り、静かに彼女に近づいた。
近づいてみると、上手にベンチに座りながら寝ているのが分かる。

白地のスキニーのパンツに紺色のサマーセーターを着ていて、足元のサンダルからは綺麗にペイントされた可愛らしいネイルが見えた。

俺は彼女の前でそっとひざまずき、手に持っているカップ酒を静かに取りベンチの上に置いた。
すると、急に、その女の子はパッと目を開けた。
驚いて後ろにひっくり返りそうになっている俺の事に気づきもせずに、どこか遠くを見て大粒の涙を流している。


その涙を浮かべた泣き顔は、この世のものとは思えない程に美しかった。

ハーフかな…?
何だか黒目の色素が薄い気がする…

月の明かりに照らされた白い肌は光り輝いていて、小ぶりだけどはっきりとした目鼻立ちは、西洋のお姫様を彷彿させた。

俺はその子がよそを見ている事をいいことに、その可愛らしい顔をジッと見ていた。

すると、突然に、その子は俺の方を見た。
完全に目が合った。

俺は、一瞬、力が抜けて、かろうじて支えていた体がバランスを崩し地面に尻もちをつく。

なんだかレーザービームにでもやられたような、そんな敗北感を味わっている。
胸に目に見えない矢が刺さっている気がして、息をするのも難しい。