先週の金曜、会社の先輩の大村という男が死んだ。

もちろん直接現場を見た訳ではないけど、マンションの自室で、自分の両耳にボールペンを突き刺して死んでいたらしい。

大村自身の手がペンをギュッと握り締めていたというので、警察も事件性は認めずに、すぐに自殺だと判断した。

会社の連中は、そんな大村の死に様を随分不思議がったりしていたけど、俺は特に驚きもしなかった。

それでも司法解剖がどうしても必要らしく、多分、大村の身体は詳しく調べられたのだと想像している。

判り切っていることを調べるために身体を弄り回されるなんて、ちょっと気の毒だと思う。

すぐに通夜があって、同じ課の奴らは課長を先頭に連れ立って公共斎場に行ったらしいけど、俺だけは「どうしても外せない用事がある」と課長に断って直帰した。

周りから見たら不自然だっただろうとは思うけど、通夜なんていう湿っぽくて皆が押し黙っているような空間には、今は堪えられそうにないから。