そう言って、1枚の紙切れを渡してきた。

何かのDVDの予約受付票の裏に、ボールペンで雑な文字が書きなぐってあった。

『●●●であなたを見かけました。とても気になっています。
どうしても声をかけることが出来なかったので、こうしてメモを書きました。

俺は20歳、××大学の学生です。顔はよくラルクのハイドに似てると言われます。

個人的にお会いしたいです、電話かメールください。

090-****-****
メルアド***@***~』

俺は思わず「うわキモ」と口走った。

●●●とは、近所にあるレンタルビデオ店。××大学も近所にある。
その自称ハイド君は、一切気配を悟られずにA子に忍び寄り、肩から提げているトートバッグの中にこのメモを放り込んだのだろうということだった。

A子は、面白そうだからこれからメールしてみると言いだした。

この頃のA子はとにかく彼氏に飢えてたし、なんつうかバカだったので、こんなおかしなアプローチにもロマンスを感じてしまったんだろうと思う。

俺は別に止める理由も無いので

「どうなったか後で教えてね」

と言ってその場はオシマイ。