何かが起こった。もしくは、起こっていると感じたからだ。

駐在さんには見覚えがあると言い、荷物を店で預かり、一つ一つを広げてみた。

乱雑にガラクタが詰まっていた鞄の中から、一つだけ立派な桐の箱が出て来た。

「へその緒か?」

喜一は箱の中が気になったが、恐ろしさもあったため箱は開けず、親父の帰りを待つ事にした。

夜になり親父が帰って来た。

喜一は店から居間に入り、玄関の親父の元へと走った。

「親父!ちょっと来て!」

喜一の声に、ほろ酔いだった親父の目つきが変わる。

店に入りガラクタの山を見るなり

「そうか、そうだったか・・・

喜一、俺宛の郵便持って来い」

喜一が何を言うわけでもなく、親父には何か解ったのか、喜一に命令した。

親父はここ3日、他県の骨董市(一種の寄合)に顔を出していたため、2日分の郵便物が貯まっていた。

親父は一つのハガキを見つけるとため息をつき、

「すまなかったなぁ・・・」

と、ガラクタに向かってぽつりと言った。