家は昔質屋だった。

と言っても、じいちゃんが17歳の頃までだから、私は話でしか知らないのだけど、結構面白い話を聞けた。

その日の喜一は店番をしていた。

喜一がレジ台に顎を乗せて、晴天の空を恨めしそうに見上げていた時

「もし、坊やここの主はどこかね?」

喜一はビクっと体を大きくはねらせた。

全く人の気配が無かったのに、急に太った男が店の前に現れたのだ。

「えっと、親父は骨董市に出かけてて、夜まで戻らないよ」

喜一の言葉に、男は急に挙動不振になった、

「どうしよう・・・どうしようか?

・・・いやしかし・・・」

男は何やらぶつくさ言い出した。

男はもう水無月になると言うのに、大きな虫食いだらけのコートを羽織り、帽子を深くかぶっていた。