小学生は、蓋があるならこの蓋をしていた穴か何かがあるのではと思い、周辺を散策した。

しかし何も見つからず、諦めて帰ろうとしたときにふと思い立って神社の社の中を覗いてみた。

その発想は正解だったようで、社の中には同じような蓋が置いてあった。

祭壇の上に飾られており、周囲を幾重にも注連縄が張られていた。

何に蓋をしているのかどうしても気になった小学生は社の中に入り、祭られている蓋に近づいた。

しかし不思議なことに、蓋は祭壇に立てかけられているだけで 『何かに蓋をしている』わけではなかった。

余計に好奇心をくすぐられた小学生は注連縄をくぐり、蓋の裏手に回った。

すると、薄暗い中分かりにくかったが、蓋とほぼ同じ大きさの金属の円盤が貼り付けられているのが分かった。

この金属板もまたずいぶんと古いもののようで、酸化して真っ黒だった。銅か青銅のようだった。

小学生は、その金属板が何なのかとても気になったので、蓋をはずそうと試みた。

しかし、蓋と金属板はぴったり張り付いているようでびくともしない。

諦めた小学生は、せめて記録に取っておこうと思い、金属板の裏側を写真に撮り、持ってきていたスケッチブックに写生した

その後、田舎から帰ってきて写真を現像に出したのだが、肝心の金属板の写真がない。

どういうことか現像屋に問い詰めると、真っ黒の写真が何枚かあったそうだ。

撮影の順番からソレが金属板を写したものだと分かった。

小学生は無理に頼み込み、その真っ黒の写真も現像してもらった

それから、小学生は夢に悩まされるようになった。

夢の中で彼は同じように金属板と蓋をはがそうとするのだが、どうしても開かない。

爪が剥がれるのも構わずに躍起になるが、結局何もできずに夢から覚める。

日を追うごとに小学生は、あの金属板が何なのか気になって気になって仕方なくなっていった。

その日も同じように蓋と格闘する夢を見るが、いつもと異なっていた。

蓋が、少しだけずれたのだ。小学生は歓喜した。

遂にこれが何か分かるときが来た、そう思っていっそう力を入れるが、その日はそれ以上動かなかった。

ところが、その日から夢を見るたびに少しずつ蓋が開いていった。

小学生ははやる気持ちを隠そうとせずに、毎晩毎晩蓋と格闘した。

夢から覚めても考えるのは蓋のことばかりで、夏休みの宿題も自由研究も放り出していた。起きているあいだすることは、真っ黒の写真を眺めるか、金属板の絵をひたすらスケッチすることだった