語り部というのは得難い才能だと思う。

彼らが話し始めると、それまで見てきた世界が別のものになる。

例えば、俺などが同じように話しても、語り部のように人々を怖がらせたり楽しませたりはできないだろう。
 
俺より五歳上の従姉妹にも語り部の資格があった。

従姉妹は手を変え品を変え様々な話をしてくれた。

俺にとってそれは非日常的な娯楽だった。

今はもうそれを聞けなくなってしまったけれど。
 
従姉妹のようには上手くはできないが、これから話すのは彼女から聞いた中でもっとも印象に残っているうちのひとつ。