中学二年の夏休み、心霊ツアーと称し五歳上の従姉妹と他県まで遠征した。

目的地は某県にある公営団地の廃墟。

これはかなり有名な場所で、仮に心霊スポットではなくとも廃墟好きの俺にはたまらないものがあった。

到着したのはまだ陽のあるうちだった。

立ち並ぶ無人の団地とそこかしこに残る生活の痕跡は、確かに噂通りの偉容だった。

草が伸び放題の空き地にぽつんと置かれた三輪車、錆びた鉄製のドア、引き出しに衣類がしまわれたままのタンス。

そして周囲は緑深い山々。

団地全体が、本来あるべきではない違和感を放っていた。