その後、ホラーブームはぶり返すことなく、俺達は6年生になった。

ブームは収束したが、全く怪談話をしなくなったわけではない。

俺のクラスは時折、田所くんの怪談話を楽しんでいた。

田所くんの怪談を聞きに、他のクラスからもたまにやってきていた。

大きな問題もなく、せいぜい放課後に教室を占拠するくらいだったので、先生たちも大目に見てくれていた。

そして小学生最後の夏休み明け、田所くんは夏休みの終盤に体調を崩していたらしく、2学期が始まって1週間ぐらい休んでいた。 

「一人だけ夏休み延長してんじゃねーよ!」

とみんなに言われ、弱々しく笑っていたのを覚えている。

ともあれ、1週間お預けを食らっていた俺達は、今日の放課後楽しみにしてるぜ、と口々に言った。

いつものように放課後の教室に集まった俺達は、夏休みの思い出を交えながら田所くんの怪談を聞いた。
 
その時の田所くんの話は「蓋の話」。