今から話すのは、どこかからの帰り道、夕暮れの中歩きながら従姉妹が話してくれた奇談のひとつ。

従姉妹は子供の頃、線路沿い並ぶ住宅地の一角に住んでいた。

辺りには所狭しと民家や商店が立ち並び、常に何かしらの騒音がしていた。

ガラクタをぶちまけたような場所だが、子供にとっては遊び場に困らないところであったようだ。

従姉妹は毎日あちこちを探索して廻った。

トンネルを見つけたのはそんなある日のことだった。

土手になった線路の斜面に、生い茂る草に隠れるように口を開いた穴。

ひとりで暇を持て余していた従姉妹は早速入ってみた。

トンネル自体は長さ十メートルに満たない、土手の反対側に繋がる小さなものであったらしい。

トンネル内部はコンクリートで造られ、暑い日でも薄暗くひんやりとしていた。

電車が頭上を通過する以外は外の世界から隔絶されたように静かで、従姉妹はそこを気に入り自分だけの秘密の場所にした。