いくら夜の森でも、ぼんやりとくらいは見えるはずだ。
しかし目の前には何も見えない。

ただ足音だけが通過した。

そして、立ち止まった。

木の下に着いたのだろうか。

あたりは再び静まった。もう足音は聞こえない。

「あ、ヤバい」

従姉妹が小さく呻いた。

「逃げるよ」

そう言って俺の腕を掴み走り出す。

それで一気にパニックが襲った。

必死に走った。

よく転ばなかったものだと思う。