あたし達の間に気まずい沈黙が流れる。



あたしがそれを破った。



「昼麻ちゃん…は?」



悠麗は浮気なんてするような人じゃない。



絶対なんかあった…。



「…色々あって別れた」

「別れた!?」



なんで…?



「あいつ浮気するし。それ玖麗のせいにしてくるし。意味分からないしもう知らねえ」



玖麗の…。



あたしも覚えがある。



海流と仲が良すぎて、過去何回か彼氏に嫉妬された。



酷いときには海流と喋るなって言われたり。



あたしとしては、付き合う前だって当然海流は家族同然。



それを理解されないのも腹が立ったし、喋るなって言われる権限がなんであんたにあるのよって思って速攻別れたけど。



そんな風に言われて浮気されて、多分、悠麗は凄く傷付いたんだと思う。



昼麻ちゃんのこと大事にしてたし、案外傷付きやすいから。



でもそんな別れ方って…。



あたしは玖麗の味方だけど、同時に悠麗の味方でもある。



どっちかに何か言うなんてできないよ…。



「とりあえずもう、家には連れてこないで」



それしか言えなかった。



なんとなくすっきりしないまま次の日がやってきた。



付き合って初めてのデートだから、悠麗のことなんて忘れる!



海琉と待ち合わせてるのは10時。



花火は夜だけど、水族館を先に回るんだ。



浴衣着なきゃ…。



まだまだ暑い9月は、浴衣を着ても寒さは全く感じない。



浴衣を着たのも一年ぶりだ。



白地に黄色い向日葵の柄がお洒落に入った浴衣。



早く海琉に会いたい!



まだ時間があるので髪の毛もアップにする。



念入りにメイクして、準備終わり!



時間は10時5分前。



「いってきまーす」



家を出たら、外で海琉が待ってた。



あたしの家で待ってたら良かったのに…。



「浴衣、ど? かわいくて倒れちゃう?」



この前みたいに『倒れない』って言われると思ってた。



それなのに、予想外の反応。



「倒れるかも…」



そう行った海琉に、不覚にも照れてしまった。